成人式に行かないで闇を抱えていた僕を救ってくれたプルシェンコ先輩

大学の友達はみんな実家に帰ってしまった。僕は一人横浜に残り、成人の日をどう過ごすか考えていた。しかし、酒を飲む以外の選択肢が浮かばない⋯⋯。

バイトを入れることも考えたが、「成人式に行かないの?」って聞かれるのが嫌だった。かと言って、みんなが同窓会で楽しんでいる日に、一人で酒を飲むのはむなしすぎる。僕はまだ20歳の新成人だ。まだそんなことをする年じゃない。

九州の母からは、「成人式は帰って来んと?」とメールが入っていた。でも僕は「成人式で会う人もおらんし」とだけ返した。そのことは今でも後悔している。父親になった今、自分の子供には絶対にそんなことを言わせたくないと思う。

でも僕は孤独じゃなかった。大学の先輩が僕を救ってくれた。あれから15年以上たった今も、あの日のことはよく覚えている。成人式に行かないで闇を抱えていた僕にも、成人の日に良い思い出が残った。ありがとう、プルシェンコ先輩!

成人式に行かなかった理由

僕が成人式に行かなかった理由は単純で、「友達がいなかったから」だ。

僕は中学受験をして、自宅から片道1時間ほどの私立中学へと進んだ。本当は地元の公立中学に通いたかったが、母の期待に応えようと中学受験を頑張ってしまい、とうとう県内で一番の進学校に合格してしまったのだ。

しかし、小学校では成績が良かった僕も、中学に入るとすぐに落ちこぼれてしまった。県内はもちろん、九州各地から秀才が集まってくるような環境で、僕は6年間、平均点すら取ることもできなかった。

成績が悪いことを母に咎められた私は、猛烈に反発した。10円ハゲができるほど中学受験を頑張ったのに、どうしてまだこんなにもつらいのか!

高校を卒業する時ほど、人生で嬉しかったことはない。少なくとも、20歳の自分にとってはそうだった。東京に行きたかったが、東京には行ける大学がなかった。でも、横浜も東京と同じような都会だと思っていたので、夢、希望、無謀、たくさん抱いて飛んで行った。

19『果てのない道』
たくさんの人に送られることも、大粒の涙が出てくることもなかったが、僕の心はケンジのように揺れていた。しかし横浜は、思っていたほど都会ではなかった。

高校を卒業する頃には、小学校の頃の地元の友達とはすっかり疎遠になっていた。中学・高校の友達は何人かいるが、同じ福岡県でも地元は違う。だから成人式に行ったところで、友達は誰もいない。そして何より、周りが同窓会を楽しんでいる中、一人で成人式に出席するなんて絶対に耐えられないと思った。

プルシェンコ先輩も成人式に行かなかった

プルシェンコ先輩は、僕が大学に入って最初に仲良くなった先輩だ。僕と同じ九州出身、中高一貫の男子校、ヘヴィメタルが好きなベーシスト。これで仲良くならないわけがない。

しかも先輩には絶大なカリスマ性があった。ロシア人のような顔立ちで、金髪ロン毛が似合うイケメン。まさにプルシェンコみたいだった。つい最近まで田舎の極めてダサい進学校にいた僕に、「これが大学生かーーーっ!」と叫ばせた。おまけに後輩の面倒見もよく、多くの後輩から慕われ、多くの先輩からかわいがられる人柄だった。

念のため補足しておくと、私は先輩のことをプルシェンコと呼んだことは一度もない。「プルシェンコに似てますよねー」ぐらいは言ったかもしれないが、きちんと名前に敬称を付けて呼んでいる。でもブログではちょっとインパクトを付けたいので、本人の許可なしにプルシェンコ先輩としている。この記事が本人の目に入ることはないだろうが、万が一あったとしても受け入れてくれるだろう。

そんなプルシェンコ先輩も、成人式に行かなかった一人だ。事情は僕と同じだった。だから年末から「どうせ成人式行かないだろ。俺と飲もうぜ!」と言ってくれていた。とても嬉しかった。

僕を闇から救い出してくれた一本の電話

「今から飲みませんか?」

成人の日、僕はプルシェンコ先輩にメールを送ろうかどうか迷っていた。すぐに送れなかったのは、「向こうから誘われたかったから」だ。よく意味がわからないだろうが、この期に及んで「成人の日は誰かに祝ってもらうもの。自分から連絡したら負け」などというクソみたいなプライドがあったのだ。

表面上は「成人式なんて別に」という感じで取り繕っていたが、本音は同窓会を楽しみに地元へ帰っていく友達のことが死ぬほどうらやましかった。同窓会の案内どころか、誰からも連絡が来ない自分。この状況で自分から「飲みませんか?」なんて誘ったら、それこそ終わりだと思った。

そんな具合で10分ほど送信ボタンに指を置いたままでいると、携帯が鳴った。もちろん、プルシェンコ先輩からである。僕はわざと5コールぐらい待って電話をとった。

「早く来いよ。焼酎あるぜ!」

家に行くと、なぜか鷹正宗のホークス優勝記念ボトルがあった。この日の酒の味は、今でも忘れられない。

自分の子供には成人式を楽しませたい

プルシェンコ先輩のおかげで、僕にも成人の日に良い思い出ができた。15年以上たった今でもこうしてブログを書けるほど、あの日のことはよく覚えている。先輩、本当にありがとう! また飲みに行きましょう!

でも、父親となった今、自分の子供には同じような思いをさせたくないと思う。みんなと同じように成人式に行って、同窓会で酒を飲み、ベロンベロンで家に帰ってきてほしい。子供が毎日幸せでいられるように、父親としてできることは全部やろうと思う。

色んな事情があって、成人式に行きたくない新成人も多いでしょう。無理して行く必要はありませんが、よっぽどの事情がなければ、両親への感謝の気持ちだけでも伝えてあげてください。私もそれだけは後悔しています。

闇を語り合う相手がいなければ、私に吐き出してもらっても構いません。良い返しはできないかもしれませんが、文章にするだけでも楽になると思います。Twitter(@munakataseo)のDMを開放しておりますので、遠慮なくメッセージを送ってください。